アパートで暮らしていた若夫婦に、長女“こはるちゃん”が誕生したのを機に、二世帯同居の計画が本格化したTさんご一家。すでにそれぞれの生活基盤ができていたぶん、お互いの生活を尊重する完全分離の二世帯住宅は、ごく自然な選択だった。 「なによりタイミングが重要だったよ」とお父様。二世帯住宅を建てると決めたものの、実際に踏み出すには家族全員の気持ちをそろえる十分な時間が必要だったという。誠設計事務所の「家づくりセミナー」に足を運んでいただいたのもそんな折だ。家族で行動を共にしながら、約1年の情報収集・勉強期間を経て、家づくりがスタートした。 「家づくりは人生の一大事。慌ててもいけないし、のんびりでもよくない。タイミングは絶妙だったんじゃないかな。」「もっと歳を重ねていたら、踏み切れなかったかもしれないわね。」とお母様も笑って話す。お互いおおきく環境の変わる二世帯住宅。家族全員の気持ちをそろえることは、家づくりの大切なステップだったようだ。 T邸は、共有の和室を境に親世帯・子世帯が隣り合う。「二世帯住宅にはいろいろなスタイルがあるけれど、うちはこのスタイルでよかったわよね。」と女性陣。 「こどもに合わせて生活する子世帯と、共働きの親世帯では、生活時間がまるで違うの。二階でバタバタしてもうち(親世帯)には音が聞こえることはないし、和室を挟んだ分、リビングにいる気配がわかる程度。生活音が気にならないから、お互いマイペースでいられるわよね。」というお母様に奥さまもうなずく。意外に大きなポイントだったというのが玄関を分けたことだとか。「計画のときは、玄関は一緒でもいいかなとも思ったけど、分けて正解。意外に重要なんですよ、出入りの音が気になるかならないかって。」 ふだんはそれぞれの生活をおくるTさまご一家だが、おかずの交換をしたり、両親のもとにお孫さん(若夫婦からみると甥っ子)が遊びにくると、中央の和室を通って行き来する。また、お盆やお正月、ご家族の誕生日には、和室がふたつの家族をつなぐダイニングに変わる。「完全分離型といっても、二世帯住宅はだいたいどこかでつながるもの。皆が集まる場所がつながるっていうのはとても合理的です。普段はそれぞれ、特別な日は一緒。使い分ができる二世帯住宅ってすごくいいですよ。」とご主人。 ベビーカーにのって「家づくりセミナー」に来ていたこはるちゃんはもうすぐ3歳。すっかりおねえちゃんになった。デッキに枝を伸ばしたミニトマトの収穫を心待ちにしながら、今日もうっすら色づいたトマトの実を観察している。